ステップ10

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渡された歯ブラシでいつものように歯を磨く。 最初は仕上げ磨きって何だと思ったのに、慣れてしまうと抵抗もなくそれを受け入れられるようになるとは・・・。 慣れって怖い。 口の中を見られるなんて、鼻の穴の中を見られるのと同じくらい、羞恥プレイだと思うのに。 「俺もやって。」 私の膝にごろんと横になる課長が可愛らしくて、言われたように歯を磨く。 気持ちよさそうな顔をするのが、喜びだったりする。 私の手が課長を気持ちよくさせてるのかと思うと、なんか嬉しい。 「終わりましたよ。肩揉みしましょうか?」 パチっと膝の上で目を開けた課長が、ニヤリと悪い顔をして笑った。 ろくでもないことを言うに違いないと思ったらやっぱり。 「じゃぁ、お礼に俺は乳揉みしてやろうか?」 溜息を一つ吐いたのは私。 「寝ましょうか。」 「うわっ、冗談だっての。揉んで、俺の肩、揉んで。ついでにイロイロなところを揉んで?なんならクララも触っていいぞ。」 また、溜息を一つ吐いた。 「歯ブラシ、片付けてきて下さいよ。揉んであげますから。」 素直に歯ブラシを片付けに行って、戻って来た。 私の前に座る課長。 肩と首を揉んであげる。 気持ちがいいんだろうか。 私は、課長に触れられて気持ちがいい。 私の手で課長が気持ちよくなってくれたら、嬉しい。 頭皮のマッサージも、上から下に順番に軽くチョップして叩くのも、撫でるのも。 ここに課長がいなければ、できないことだ。 課長の体を、手に覚え込ませるように丁寧にマッサージしたつもり。 次に会うときも、やってあげられたらなと。 背中を叩いて、お終いの合図。 「終わりましたよ?」 「んー、気持ち良かった。ありがと。」 両腕をグイッと上に伸ばして、本当に気持ちが良さそうに発された言葉に、頬が緩む。 課長自身は、気が付いていないかもしれないけれども課長はスマートに人を褒めたり感謝の気持ちを言葉にできる人。 だけど、意識してそれをしようとすると、恥ずかしくなる人だ。 私は、自分の気持ちを上手に人に伝えることが苦手なタイプで、いつも人を観察してしまう人だ。
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