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渡された歯ブラシでいつものように歯を磨く。
最初は仕上げ磨きって何だと思ったのに、慣れてしまうと抵抗もなくそれを受け入れられるようになるとは・・・。
慣れって怖い。
口の中を見られるなんて、鼻の穴の中を見られるのと同じくらい、羞恥プレイだと思うのに。
「俺もやって。」
私の膝にごろんと横になる課長が可愛らしくて、言われたように歯を磨く。
気持ちよさそうな顔をするのが、喜びだったりする。
私の手が課長を気持ちよくさせてるのかと思うと、なんか嬉しい。
「終わりましたよ。肩揉みしましょうか?」
パチっと膝の上で目を開けた課長が、ニヤリと悪い顔をして笑った。
ろくでもないことを言うに違いないと思ったらやっぱり。
「じゃぁ、お礼に俺は乳揉みしてやろうか?」
溜息を一つ吐いたのは私。
「寝ましょうか。」
「うわっ、冗談だっての。揉んで、俺の肩、揉んで。ついでにイロイロなところを揉んで?なんならクララも触っていいぞ。」
また、溜息を一つ吐いた。
「歯ブラシ、片付けてきて下さいよ。揉んであげますから。」
素直に歯ブラシを片付けに行って、戻って来た。
私の前に座る課長。
肩と首を揉んであげる。
気持ちがいいんだろうか。
私は、課長に触れられて気持ちがいい。
私の手で課長が気持ちよくなってくれたら、嬉しい。
頭皮のマッサージも、上から下に順番に軽くチョップして叩くのも、撫でるのも。
ここに課長がいなければ、できないことだ。
課長の体を、手に覚え込ませるように丁寧にマッサージしたつもり。
次に会うときも、やってあげられたらなと。
背中を叩いて、お終いの合図。
「終わりましたよ?」
「んー、気持ち良かった。ありがと。」
両腕をグイッと上に伸ばして、本当に気持ちが良さそうに発された言葉に、頬が緩む。
課長自身は、気が付いていないかもしれないけれども課長はスマートに人を褒めたり感謝の気持ちを言葉にできる人。
だけど、意識してそれをしようとすると、恥ずかしくなる人だ。
私は、自分の気持ちを上手に人に伝えることが苦手なタイプで、いつも人を観察してしまう人だ。
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