ステップ10

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優しい課長の手つきに、口付けに、この前と同じようにトロトロに溶けていく私の体と意識。 目の前の課長に夢中になっている間だけは、嫌なことから逃げられるような気がして、実際に課長が大阪に行ってしまう事実から目を背けることに成功して夢中で課長と抱き合った。 私のオデコにかかる湿った課長の前髪がくすぐったくて、顔を捩れば、 「逃げんなよ。可愛い。」 と言われ、逃げたわけじゃないと言おうと思えば口を塞がれ、もっともっとくっつきたいとどこにもいかないで欲しいと思って手を伸ばして課長にしがみ付いた。 「積極的だな。」 ふんっと笑った顔にキュンとなって、顔が熱くなった。 この前と同じようで、違う私と課長の空気。 お互い、探るようにおっかなびっくりだった空気が幾分和らいでるのかもしれない。 そんな風に思いながら、やっぱりタオルケットを足で蹴り上げて体を隠して課長が戻ってくるのも待った。 私を見て、クスッと笑った顔。 「いらねーだろ、ソレ。」 べりっとむしり取られたタオルケットを見ながら、いらなくてもいるんだもんと思った思考は行き場をなくしてふわふわとどこかに飛んで行ってしまった。 相変わらず、気持ちがいいかと言われたらよく分からないし、痛いかと聞かれたら確実に痛い。 引き裂かれるような痛みがないわけじゃない。 体が痛いのか心が痛いのか分からない感覚を味わって、課長と隙間なくくっついていられることが嬉しかった。 体の痛みから出た涙なのか、心の痛みから出た涙なのか分からない涙をこの前と同じように舐めて 「しょっぺ。」 っと笑った顔を見て、私も精一杯笑ってみた。 「ハグ、ミー、プリーズ。」 この前、私が言った言葉を課長が発して、私を抱き締めた。 「痛い?どんな感じ?」 抱き締められたまま、聞かれて。 幸せですよと言おうかと思ったけれども、可愛げのない私が出て来てしまった。 こんな時なのに。 「この前は、貫通って感じだったんですけど。」 「ぶはっ、バカヤロ。お前、もう少し、色気ねーのかよ。」 いつもと同じように笑ってくれる課長に、いつもと同じ調子で返した。 そうでもしないと本格的に泣いちゃいそうだから。 「今夜は・・・。」 抱き締められて、私の顔のすぐ近くにある課長の喉がゴクリと鳴ったのが分かった。 「開通!!!」image=491215810.jpg
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