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「ぶはっ。」
大げさに噴き出した課長の声、その声と息が私の耳にかかってむずっとして身を捩ったら、
「逃げんじゃねー。」
と抱き締め直され、そのまま、ぎゅっと腕の拘束が強くなって、嬉しくなった。
「けーごさんは?どんな感じなんですか?」
私にとっては、人生で2度目で、巷で言われてるような気持ちの良さとは無縁だけれども、イロイロな女性と何回もこういう行為をしてる課長の感想が聞きたくもあり、聞きたくなくもあり。
「ん?俺?内緒。」
私の顔の横に両手をついて、笑いながら発された『内緒』の言葉と、はにかんだような顔にキュンときた。
その顔に、右手を伸ばして湿った前髪を触ってみた。
それから、課長の右の頬に手を添えて、ゆっくりと撫でてみた。
「教えて下さいよ。」
「ずりーやつだな、お前。」
ふんっと笑って、課長の頬に添えられた私の右手を課長の左手が握って、そのまま布団の上で繋げられた。
指と指をしっかりと絡めて。
「動いてもいい?」
ずりーやつだなと言った割には教えてくれないらしい課長に頷いて、空いてる左手で課長の右腕を触ったら、左手も課長の右手にとらえられて、しっかりと指を絡めて布団の上に。
ゆっくりと、律動する課長。
隙間なく私と課長の体はくっついているはずなのに、微妙に空いてる体と体の隙間がもどかしくて、
「抱き締めて」
お願いしてみた。
「バカタレが。」
何がバカタレなのかと思う間もなく、私の両手を解放した課長の両腕で抱き締められた。
だから、私も課長の体に手を伸ばして、精一杯、しがみ付いた。
涙が溢れそうになる。
こんなにも、くっついてるのに、離れないといけないなんて。
このまま、二人で溶けてしまいたい。
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