ステップ10

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はぁはぁっと息を吐きながら、制止した課長の動き。 それでも、離れたくなくてしがみつく私。 目から涙が溢れてる。 こんな顔は見せられない。 目を閉じて、涙が引くのをじっと待つ。 落ち着かないと。 「おい、こら、手、離せや。」 「・・・。」 離しませんと思ったんだけど、離さなかったんだけど、課長の体が私の体から離脱した。 むずっとした感触に身を捩った瞬間に力が抜けて離れてしまった。 変な感触だったなと思った。 涙もうまいこと、引いたようだし。 ゴソゴソする課長。 ティッシュを奪って、自分でこそこそしたら怒られた。 「俺の仕事をとるんじゃねー。」 いやでも、恥ずかしいし・・・。 そんな気持ちでいたのに、強引に私の手元からティッシュを回収して後処理されてしまった。 やっぱり恥ずかしいんですが・・・。 気怠い。 寝てしまったら、明日になっちゃうから嫌なのに。 目がトロンと落ちてきそうだ。 課長がごそごそと布団の中に入ってきた。 そのまま、腕枕をされたから、課長の胸元に抱きついた。 課長も、何も言わずに、そのまま私を抱き締めてくれた。 「離れ難くしちゃったな。」 課長がポツンとそう言ったときに、ぶわっと涙が出てきた。 抱き合いたいと願ったのは私と課長の意思だったけど。 それが離れ難くなった原因なんだろうか。 でも、こうなることが自然だったような気もするし。 ぐちゃぐちゃの自分の思考と昂ぶった感情。 それから、体の怠さ。 全部がオーバーヒートしたみたいで、考えることを諦めて、課長の心臓の音を子守唄に、そのまま気持ちよく寝入った。
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