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課長の最寄駅まで暑い暑いと言いながら二人で歩いた。
せっかくお化粧したのに汗でとれてしまうではないか。
どうせなら、キレイな顔で別れたい。
乙女心だ。
スーツケースがゴロゴロと鳴ってる。
まるで、これから海外にバカンスにでも行くような感じに見える。
やってきた赤電車に乗って、入口付近に二人で並んで立った。
スーツケースが邪魔にならないように、一応、他人様に気を使ったらその場所になっただけで、他意はない。
ドアの窓から流れる景色を見るとはなしに見ていた私に話しかけてくる課長。
「楽しい夏休みだったなー。」
「そうですね、楽しい夏休みでしたね。」
毎日が楽しかったし、新鮮だった。
課長の実家、キャンプ。
それから課長のお宅。
念願の忍者にも会えた。
全部、楽しかったなと思いだして、自分の顔が緩んでることが分かった。
ドアのガラス越しにうっすらと映る自分の顔が見てとれた。
課長からの視線を感じて、課長を見上げたらやっぱりこっちを見ていた。
「半月ぶりぐらいなだけなのにな。すげー久しぶりな感じがした。」
私に会ったときの感想だろうか。
そのすげー久しぶりな感じがしただけの時間をまた過ごさないといけないんだよね。
「大阪、行く前に乗ったときは朝も帰りも満員電車だったのにな。お盆の真昼間は空いてるのな、電車。」
あぁ、電車のことか。
「こっちにいた頃はさ、満員電車って最悪だよなっていつも思ってたのに。いざ、電車に乗らない生活を始めたら、懐かしいんだよ。満員電車で朝、名古屋の一つ手前で降りてたことがさ。」
話題の名古屋の一つ手前の駅に電車が到着しましたね。
なんか、泣きそうな気持ちになったのに、あまりのグッドタイミングに笑った。
「狙いましたか?この駅に来たときにその話をしようって。」
「バカヤロ。狙うわけねーだろ。そんなに話術は巧みじゃねーって。」
いつもの課長と私だ。
うん、大丈夫。
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