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ドアが開いて、閉じて。
名古屋駅の手前の駅から、私と課長の目的地である名古屋駅に。
電車が地下に潜っていく。
地下に潜って行くと、名古屋に来たんだなぁと感じるから不思議だ。
毎回、同じなのに、毎回同じ感想を持つ。
名古屋駅は不思議スポットだ
地下に潜って暗くなって、ドアの窓にはっきりと私と課長の顔がうつる。
窓越しに課長の顔を見ていたら、変顔をして笑かせてこようとする。
課長の変顔は白目で舌を口から出しただけだ。
ふん、詰めが甘い。
課長が白目を止めた瞬間を狙って、私は自分の口内にある舌を鼻の下の上唇の中に潜りこませてゴリラ顔になって白目を剥いてみた。
「ぶはっ!!!」
課長が盛大に噴き出した。
してやったりだ。
何食わぬ顔をして普通の顔になってみたけど、楽しかったからガラスにうつる私の顔も笑っていた。
「バカヤロ、めっちゃ恥ずかしかっただろ。笑かしてくんなよ。」
「先に変顔したの、けーごさんですよ。」
「美由紀の変顔に負けたってーの。」
こそこそと話す私と課長の声。
きっと、誰にも聞かれてないのにそれでもなんとなくこそこそしてるのが秘め事っぽくてちょっとくすぐったい。
ほどなくして、名古屋駅の煌々とした電気に迎え入れられ停車。
ドアが開いたからそのまま一緒に電車から降りた。
けっこうな大きさのスーツケース。
エスカレーターには、それなりの人だかりが出来てる。
どうするかなと思ったら、迷わず階段に向かった課長にならって私も階段へ。
ミュールで登るの、疲れるなぁと思ったけれどもスーツケースを軽々と持ち上げて軽快に階段を登る課長を横目で見て、赤身になるためにはエスカレーターばっかり使っていたらダメだなと自分を諌めた。
これからは、階段を使おう。
わかっちゃいるけどやめられないのがエスカレーター。
でも、なるべく階段派に変更だ。
課長が階段派なら、お揃いだ。
うん、こんなちっさなことでお揃いなんて考えちゃう私は完璧な乙女思考。
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