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「思ったんですけど、中央改札から出るよりも北口から出た方が近いですよね、山本も新幹線乗り場も。」
まさに中央改札を出た後に言ったから手遅れなんだけども。
「北口に思い出はねーんだよ。こっちは、『コンバット』の現場だろ。」
ニヤッと笑いかけてくる顔の子憎たらしさ。
この辺りでやらかしたのか、記憶にあるようなないような現場だ。
事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだっけ。
「一番最初の事件現場は、会議室でしたけどね。」
「バカヤロ。誰がカレーがいるか会議室で聞くんだよ、っとに。」
笑った横顔がやけに胸に残った。
課長と並んで、地上に出てから山本のある駅裏の地下街に向かう。
ナナちゃん人形と並ぶ待ち合わせのメッカ、金時計を横目に通過して中央コンコース。
さすが夏休みだ。
凄い人だ。
知り合いがいたっておかしくなさそうな感じで若干ソワソワ。
駅裏の地下街に行ってしまえば知り合いに遭遇する確率は格段に下がりそうだ。
若者は、わざわざあっちの地下街には行かないでしょう。
駅裏・・・ちょっと腐ってる人とかオタクな感じの人は好きだろうけれども。
「そう言えば、どうしてこっちに定食屋があるって知ってたんですか?」
課長だって、一応若者に分類されてもおかしくないだろうしわざわざこっちの地下街って。
「あー、人事部人材開発課の山本課長って知ってるか?」
「知ってますけど・・・」
「あいつの親のお店。」
はっ?
ウソ!!!
「本当ですか!?」
思わず、課長を見上げて勢い任せに大きな声で聞いてしまった。
「バカがみ~る~豚のけ~つ~♪」
・・・ヤラレタ。
騙されたんだ。
笑ってる。
「人材開発の山本課長に教えてもらったのは、本当。自分の名字と同じ名前の定食屋があるって。入ってみようかと思ったけど、なんか同じ名前だと思うと入りにくいっていつだっけなー、けっこう前に言ってたからさ。」
へー。
確かに、自分の名前と同じだったら入りにくいかも。
スナック美由紀。
演歌が流れる場末のスナック。
顧客層も悪ければ売り上げも悪い。
そして、ときどき痴情のもつれから警察沙汰。
オーマイガー。
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