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前回ここに来たのは、課長が大阪に行く日だったなと思った。
ガラガラと引き戸を開けて中に入れば、前回来た時と同じ雰囲気のレトロな店内。
演歌に手書きのお品書き。
太った大将と小太りのおばちゃん。
店内には数組のおじさんが座ってる。
競馬新聞を広げて、耳に赤鉛筆でもかけていてくれたら雰囲気アップなんだけど、そこまでじゃない。
普通に雑誌を読んでいる。
できれば卑猥なページをニヤニヤ笑いながら読むのはやめて欲しい。
おじさんの横を通過するときに見えてしまった。
いつもと同じ席に二人で着席。
お冷とおしぼりを持って来てくれたおばちゃんに
「ロース味噌カツ定食2つ」
と課長が注文した。
ですよね、山本と言えばロース味噌カツ定食。
他の定食も美味しいけれども、今日はロース味噌カツ定食に決まってる。
おしぼりで手を拭いて、お冷を一口。
二つ入った氷が水面で揺れている。
新幹線の時間はいつだろうか。
そう言えば聞いてない。
「何時の新幹線ですか?」
「ん?1時半くらい。」
会話が終わった。
今が12時だから、あと一時間半。
巨大な砂時計が出現してもしなくても、あと90分がタイムリミットだ。
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