ステップ11

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前回ここに来たのは、課長が大阪に行く日だったなと思った。 ガラガラと引き戸を開けて中に入れば、前回来た時と同じ雰囲気のレトロな店内。 演歌に手書きのお品書き。 太った大将と小太りのおばちゃん。 店内には数組のおじさんが座ってる。 競馬新聞を広げて、耳に赤鉛筆でもかけていてくれたら雰囲気アップなんだけど、そこまでじゃない。 普通に雑誌を読んでいる。 できれば卑猥なページをニヤニヤ笑いながら読むのはやめて欲しい。 おじさんの横を通過するときに見えてしまった。 いつもと同じ席に二人で着席。 お冷とおしぼりを持って来てくれたおばちゃんに 「ロース味噌カツ定食2つ」 と課長が注文した。 ですよね、山本と言えばロース味噌カツ定食。 他の定食も美味しいけれども、今日はロース味噌カツ定食に決まってる。 おしぼりで手を拭いて、お冷を一口。 二つ入った氷が水面で揺れている。 新幹線の時間はいつだろうか。 そう言えば聞いてない。 「何時の新幹線ですか?」 「ん?1時半くらい。」 会話が終わった。 今が12時だから、あと一時間半。 巨大な砂時計が出現してもしなくても、あと90分がタイムリミットだ。
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