ステップ11

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何か気の利いたことでも言えたらいいのに、伝えたいことって何だろうか。 こんなときに、気の利いた言葉が一つも出てこないなんて残念だな。 ソワソワと目線が泳ぐ先にいたのは、目の前の課長とここに来る度に美味しい料理を作ってくれる大将だ。 あぁ、おばちゃん、ごめんね。 そう言えば、キャンプに行ったときに、ケーゴーがおばちゃんを殺した疑惑のシャレにならない妄想しちゃったんだっけ。 生きてて良かった。 元気で良かった。 あのおばちゃんと大将の関係ってどんな関係なんだろう。 夫婦なのかなぁ。 だとしたら素敵だ。 この道ウン十年の慣れ親しんだ感じが醸し出されてるような、そうでもないような。 でも、連携プレーはきっと凄いに違いない。 頑固一徹、俺について来い的な大将。 無口で無愛想っぽいのにちゃんと営業できてるのは、きっとあのおばちゃんのおかげだ。 ほら、無言でお盆の上にお皿がのった。 それをおばちゃんが引きうけて・・・アイコンタクトを取ったかもしれない。 阿吽の呼吸ってやつだ。 「お前、見過ぎだろ。」 「あっ・・・。はははっ。お腹が空いていたもので・・・。」 課長からの視線を受けていたとは。 恥ずかしい。 モジモジしてしまいそうだ。 「お待たせしました。」 いつも通りの元気なおばちゃんの声。 頂きますと手を合わせて、割り箸をパキンと割った。 初めて食べたときから変わらない美味しさ。 でも、私は変わったのさ。 食べ順が・・・。 ここはやっぱり、千切りキャベツからでしょ。 その後がちょっとのポテトサラダ。 そしてお味噌汁からの味噌カツ&白飯だ。 食べ順ダイエット。 物事には順番が大切だ。 付き合ってから結婚する。 結婚してから子供を授かる。 きっと、課長の理想がそれだ。 肉体関係は結婚前でも良かったのだろうか・・・。 クララが我慢できなかったんだ。 クララのバカ。 クララの意気地なし・・・じゃなくて意気地があったのか。
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