ステップ11

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プシューっと音がしてもいいくらいに顔が熱くなった。 自分のバカタレな妄想もさることながら、課長のストレートな物言いにも。 そこはてっきり、カーブとかフォークとかだと思うでしょ。 だって、ここはいつも野球中継が流れてる大衆食堂 山本だし。 「酒井さんって、どこのチームのファンですか?」 「はっ?」 しまった、私の頭の中は野球でいっぱいだったけど、課長に通じてない。 「野球だったら。」 「あー、特にファンってないけどお客さんに聞かれたら中日って答えてる。」 な、なるほど。 特にファンってないけど、お客さんに聞かれたら中日って答えるんだ。 「ですよね、特にファンじゃなくてもとりあえず中日って答えておけば間違いないですよね。間違ってもカープとか言いませんよね、愛知県在住だったら。」 「ぶっ、お前、カープファンなのかよ。」 「いや、違います。スポーツで好きになった選手は横綱千代の富士とカールルイスだけです。」 「ぶはっ、バカヤロ、笑かしてくんな。食べられないだろ。」 米粒がこっちに飛んでこなくて良かった。 お茶碗とお箸を持つ課長を見て、そう思った。 笑える答えだっただろうか。 横綱千代の富士は偉大だ。 小さな大横綱と言われていたんだぞ。 そして、カールルイスは私の子供の頃の大スターだ。 ジョイナーとカールルイスの存在感で幼心にやっぱりアメリカは凄い国だと思ったんだから。 タカちゃんがカールルイス役で、私がジョイナー役で遊んだことがある。 公園で・・・。 タカちゃんは足が速いからカールルイスでも良かったけれども、私がジョイナーは無理があったっけ。 ふふふっ、懐かしい。 「何、笑ってんだよ。」 「あっ、いや、カールルイスとジョイナーの思い出を。」 「ごふっ。ジョイナー。懐かしいなぁ。どんな思い出だよ。」 笑った課長の顔を見て、私とタカちゃんの子供の頃の話をしてあげた。
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