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「我慢しなくてもいいだろ。気が済むまで泣けばいい。」
私の右手と課長の左手は繋がったまま。
課長の右手が私の背中にまわって、抱き締められて耳元で囁かれた言葉の通りに、流れるだけの涙が頬を伝っていった。
ぐいっと後頭部を課長の胸元に押さえつけられて。
「目の前のことに夢中になってたら、時間なんてあっと言う間だろ。俺、みゅーが描く絵、楽しみにしてるからさ。俺も自分のやりたいこと、しっかりやるし。大丈夫だって。でも、淋しくなったら俺に言ってこいよ。ちゃんと元気にしてやるから。」
うんうんと、課長の胸元で頷いた。
課長の声を聞きながら。
課長の匂いに包まれて、流れた涙が自然にひいていった。
課長の腕の中で落ち着くって、前なら絶対に有り得なかったのに。
むしろ、一番落ち着かない場所だったと言ってもいいくらいなのに。
世界一危険な場所から世界一安心できる場所に変わったんだろうか。
課長、すごいな。
変態なのに・・・。
ちょっと、感動してます。
課長、ありがとう。
こんなまともな姿も見せてくれて、こんな人を好きになれて良かったと思う。
私の後頭部を押さえる手が離れた。
見上げた課長の顔を見て、嫌な予感。
ニヤリと笑ってる。
「やっと素直に泣いたみゅーちゃんに褒美をやるよ。」
上から目線かつ、褒美。
ごくりと生唾を飲み込んた。
一応、褒美ってことは、良いモノだよね?
なんだろう。
サプライズで何か素敵な品物をプレゼントしてくれるってことだろうか。
ブッ!!!
なんか、あってはならない音を聞いた気がする。
気のせいであって欲しい。
課長のミギーがグーになって私の目の前に登場したと思ったら広げられた。
嬉しそうに課長が笑った。
「はい、褒美!!!あっ、間違えた、これは放屁かぁ!!!」
オーマイガー。
「何、バカなことしてるんですか!!!大人として恥ずかしいですよ!!!」
「うっせー、誰も俺達のことなんて見てねーからいーんだよ!!!」
ケラケラと笑う声を聞いていたら、課長が乗る新幹線がやってきた。
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