ジャンプ1

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土曜日の閉店間際の島田商会に顔を出したのは、純粋にイトちゃんの顔が見たいと思ったから。 暑いなと思いながらも、イトちゃんのいるだろう島田商会へ。 「いらっしゃいませー。」 いつも通りのイトちゃんの声。 「あっ、みゅー姐さん!!!この前のスイカ、美味しかったです。」 にっこりと笑ってくれるイトちゃんを見て、私も笑った。 イトちゃんの笑顔はほっとする。 薔薇とか芍薬とか牡丹みたいな、大げさな感じじゃなくて庶民の花な感じ。 ナズナみたいな、どこにでもありそうな可愛らしさでほっとする。 「良かった。今度課長と電話したら伝えておくね。」 「はい。探し物ですか?」 「イトちゃんの顔を見たくなって来ちゃったのが本当のところなんだけど、何かおすすめでもある?」 「ふふっ。ありがとうございます。じゃぁ、コーヒーでも飲みに行きませんか?」 ニコニコ笑うイトちゃんに私も笑った。 「早く帰らないとご主人様がお待ちなんじゃない?」 「マスターのお店にいるって言ってたから、良かったら一緒にどうですか?」 「遠慮しておくよ。遠藤さんに悪いから。」 「えー。じゃぁ、また今度、ジローさんのいないときに一緒に遊びましょうね。」 「うん。」 幸せそうな遠藤さんとイトちゃんの様子が垣間見れた気がして、なんか嬉しくなった。 会社で安田さんや水谷君やカトちゃんケンちゃんを見たときは、なんかどす黒い微妙な気持ちになったのに。 何でだろう。 休みの日と会社の日では、やっぱり心の余裕が違うんだろうか。 結局、お安めの初心者向けの万年筆を入手して帰った。 万年筆って、大人の使う物ってイメージだったけれども、私も立派な大人になったってことだろうか。 高い物ではないけれども・・・。
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