5300人が本棚に入れています
本棚に追加
/439ページ
『コンバット!!!』
「コンバット!!!」
汗を流しながら、居間のテレビを相手に叫ぶ私。
魂を込めたコンバットキックをバーチャルな敵に向かって繰り出したところで電話が鳴った。
この着信音は課長だ。
帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)だからすぐに分かった。
映画の話をしていたときに、『スターウォーズ』が好きだと言っていたから課長にぴったりだと思ってダウンロードしたのだ。
重厚な音楽とともに、今にもベイダー卿の息遣いが聞こえてきそうな恐怖。
背筋がゾクゾクするところが課長っぽい。
慌ててスマホを持って、通話体制。
そして、隊長の画面を一時停止。
「もしもし。」
「もしもーし。可愛いみゅーちゃんの恰好良い彼氏でーす。」
陽気ですね。
脱力しました。
もっと普通に登場してくれればいいのに。
「お疲れ様です。」
可愛くない私は、ついつい社会人の挨拶を繰り出してしまった。
「ちっ、彼氏に対する挨拶じゃねーだろ、それ。萎える。」
「おはこんばんちは。」
「ぶっ、バカヤロ。」
楽しそうな声が聞こえてきた。
その声が好きだと思う。
見えないけれども、その声の雰囲気がいい。
相変わらず、これと言ってお互いに報告しないといけないような内容もなく盛り上がるほどの話もないけれどもそれでもわずかな時間でもお互いがお互いのことを思いながら会話する貴重な時間だなと電話に対して思ったりした。
「あと、一週間だな。」
「ふっ。物凄く、楽しみにしてますからね。食い倒れとか。」
「おー、俺もみゅーのこと、食い散らかしてやるからなっ。」
・・・恥ずかしい。
「腐りかけてますよ?」
「一番美味い時期って意味か?」
「旬は過ぎたって意味ですけど・・・。」
「いーんじゃね?俺は腐ったみゅーちゃんでも食べるから。」
「はははっ。」
誤魔化せてないけど、誤魔化し笑い。
最初のコメントを投稿しよう!