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「今、家にいるか?」
唐突な質問に疑問を持ったけれども。
「そうですよ?」
「外、出て月を見てみろよ。俺、今、ベランダから月を眺めてるんだよ。みゅーが月を見たら、同じ空の下にいるんだなって思えるから外に出て月を見ろ。」
なんだかポエマーなことを言ってる課長の指示に従って、玄関から外に出た。
それから家の前の通りまできて空を見上げる。
見えた。
「見えましたよ。」
「ロマンチックって感じだろ?」
課長の口からロマンチック、頬が緩んだ。
「はははっ。いただきましたね、ロマンチック。」
「じゃぁ、変質者に襲われないように家の中に退避しろ。」
一瞬しか月を見てないのに、退避命令。
「了解であります。」
玄関を開けて、家の中に。
「退避、完了しました。」
「おー。なんかすげー元気になった。また1週間、頑張れそう。みゅーは?」
「大丈夫です。頑張れます。充電できました。」
「そっか。声が聞きたくなったっつって電話してきていいんだぞ?」
「はい、大丈夫です。」
そんなやり取りをした後、いつものように二人で電話を切った。
「「せーの。」」
プチ。
大人なのに、この電話の切り方。
ふふっと笑って居間に戻ろうとして顔を上げたら勇気と目が合った。
げっ。
「な、何?」
「べっつにー。圭吾さんでしょ、電話の相手。顔ですぐに分かるよ。」
ニヤニヤしながらドアから顔だけ出してこっちを見ていた勇気が逃げるようにドアを閉めた。
心配、かけてるんだろうな・・・。
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