ジャンプ2

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「もしもし?」 自分でもびっくりするくらい、上ずった声が出てしまった。 しかも、立ち上がってしまった。 笑われるかもと思った矢先に聞こえた声は・・・。 「もしもーし。」 女の人の声・・・。 「えっ?」 「あー、これ、酒井圭吾の携帯ですわー。今、彼、お取込み中でな、」 女の人が出たことに驚いて声が出せなくなったところへ 「おい、マキ!!!勝手に人の電話に出るなや。」 一番聞きたいと思っていた課長の声が聞こえた。 マキって下の名前? その親しそうな雰囲気、何ですか。 頭の中が白くなって、ガン、ガン、っと音がして我に返った。 あっ、スマホ、落としちゃった・・・。 ショックなことは何度も続く・・・。 課長が私からの電話に折り返しをくれなかったことよりも、女の人と一緒にいたことがショックで。 さらにスマホの画面は・・・破損してるし・・・。 動かない。 壊れた。 壊れたのは、スマホの画面だけだろうか。 私と課長の不適切な関係も壊れたんだろうか。 ウソツキ。 水曜日の日、週末に会えるのが楽しみだって言ってたくせに。 女の人と一緒にいたんじゃん。 課長のバカ。 こういうとき、涙が出てくるのかと思ったのに、なんか出てこない。 呆気にとられてる感じかも。 ここに、帰ってくるんだろうか。 それとも、あのマキとかって女の人と一緒に過ごすつもりなんだろうか。 ここに連れ込むつもりで、私がいたら驚くだろうか。 もう8時過ぎだし、今から荷物をまとめて新幹線に乗って帰宅するなんて気が遠くなりそうだ。 やめておこう。 課長とマキとやらが現れたら、どうしよう。 台所の包丁を持ち出して、痴情のもつれから警察沙汰。 高遠部長、ごめんなさい。 今、課長の姿を見たら、きっとヤリソウです。 上司に迷惑をかけるのは申し訳ないけれども、きちんと獲物は仕留めさせていただきます。 まずは・・・腹ごしらえだ。 帰宅した課長とマキを仕留めてやる。 お重を広げて、冷蔵庫の中から課長の買い置きの酎ハイを開ける。 ついでに、包丁もスタンバイだ。 座卓の上に並んだ包丁、お重、お箸、酎ハイ。 そして壊れたスマホ。
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