ジャンプ3

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漏れそうになる嗚咽を押さえて、すべてを食べ終わったのはずいぶんと時間が経ってから。 これからどうするべきか。 家には、明日の夜まで帰りたくない。 親に心配をかけたくないから。 もちろん、勇気にも。 でも、この忌々しい大阪にいるのも嫌な気がする。 行きたかった場所はたくさんあるのに、全部が嫌だ。 愛知県に帰るか・・・。 それで夜まで時間をつぶして、ネットカフェだか満喫だかにお泊りしよう。 新幹線なんてもったいないうえに短時間で帰れたら困るから、ここは在来線で帰ろう。 そうと決まれば、動かなくては。 どれくらいの時間がかかるんだろうか。 お金を払ってお店を後にして大阪駅に向かう。 てくてくと歩く私の気持ちは喫茶店に入ったときよりも軽いのかもしれない。 涙が出る度に心の痛みが軽減されていくことにしよう。 涙が出なくなったら、失恋期間終了だ。 目指す大阪駅を遠目からでも確認できる位置までやってきたときに思った。 大阪駅は名古屋駅以上のダンジョンだったなと。 在来線で名古屋まで帰ってやる。 安くすませてやる。 課長のためにお金を使ったことがもったいない。 ウソツキエリンギ野郎。 頭の中にエリンギを出現させる。 そのエリンギを包丁で ザクリ ザクリ ザクリ それから粉々になるまで粉砕だ。 まな板に刺さらんばかりに包丁を振り下ろす。 最後は、食べて消化して排出してやる。 成仏して下さい。 ふっと、思いついた。 こんなどす黒い感情のまま生活するのは、精神衛生上、良くないと。 成仏。 そうだ、新藤家は東本願寺派だ。 こういうときほど、仏様の力にすがろう。 名古屋に戻ったら、高島屋さんか地下の巨大な本屋さんのどちらかに行って、写経の本を買ってこよう。 写仏の本もあったら買ってこよう。 ついでにCDショップでお経のCDも買おう。 名案だ。 これで、心を落ち着かせて、頭の中で課長を抹殺するなんて無駄な殺生をせずに生きられるような気がしてきた。
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