□TRIFLE□01□

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  「おーい、平井ちょっといいか」 私の仕事場、札幌市の中心部にあるオフィスビルの5階。 そこに足を踏み入れた瞬間、大声で名前を呼ばれた。 振り返らなくても誰が私を呼んだかなんて、すぐわかる。 こんな偉そうに大声を張り上げる男は、この編集部にひとりしかいない。 あー、めんどくさい。 朝一でテキスト原稿のチェックしたかったのに。 肩から下げていた大きなトートバックを自分のデスクに放り投げるようにして置くと、心の中でため息をつきながら、声の主の方へ足を向けた。 「なんですか編集長」 このフロア全体を見渡せる場所に置かれた大きなデスク。 そこに座る銀フレームのメガネをかけた目つきの悪い男。 私の上司の藤岡編集長は、嫌々歩いてきた私を見るとにやりと笑った。 「平井、北日本印刷の中野さん」 編集長はデスクの隣に立っていたスーツ姿の男の人を、顎でしゃくるようにして横柄な態度でそう言う。 「あ、中野さん! いつもお世話になってます。どうしたんですか?」
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