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「おーい、平井ちょっといいか」
私の仕事場、札幌市の中心部にあるオフィスビルの5階。
そこに足を踏み入れた瞬間、大声で名前を呼ばれた。
振り返らなくても誰が私を呼んだかなんて、すぐわかる。
こんな偉そうに大声を張り上げる男は、この編集部にひとりしかいない。
あー、めんどくさい。
朝一でテキスト原稿のチェックしたかったのに。
肩から下げていた大きなトートバックを自分のデスクに放り投げるようにして置くと、心の中でため息をつきながら、声の主の方へ足を向けた。
「なんですか編集長」
このフロア全体を見渡せる場所に置かれた大きなデスク。
そこに座る銀フレームのメガネをかけた目つきの悪い男。
私の上司の藤岡編集長は、嫌々歩いてきた私を見るとにやりと笑った。
「平井、北日本印刷の中野さん」
編集長はデスクの隣に立っていたスーツ姿の男の人を、顎でしゃくるようにして横柄な態度でそう言う。
「あ、中野さん!
いつもお世話になってます。どうしたんですか?」
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