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第四章三話
姫希は混乱していた。
驚愕の事実が次々と明らかになり、姫希自身のアイデンティティの存在も揺らいでいた。
(……分からない。四式先生が言ってたこと、私は、何一つ知らない……)
姫希の両親――父と母は、優しい人だった。
どこにでもいる一般的で、凡庸な人達だった。
娘を可愛がり、時たま起こる夫婦の喧嘩。
ただそれは姫希の知る限りで、本当は紅理事長と結託して、娘の人生を弄ぶ人間だったのかもしれない……。
姫希は暗い考えに囚われている自分に気付き、頭を振り払う。
(いまは、よそう。いまやるべきことは、零君と一華ちゃん、二人を連れて、ここから、逃げること)
背後から爆発音が轟く。
既に先生と理事は戦闘を開始したのだろう。
早く脱出しないと、二人の戦いに巻き込まれる。
先生の想いを無駄にしてしまう。
(全部、終わってから、考えよう。
四式先生は、〝最強の魔法使い〟と、呼ばれてた。
あの零君でさえ、先生は〝強い〟と言ってた。
だから、大丈夫。絶対に大丈夫……)
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