第四章三話

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 姫希は妙な胸騒ぎを感じていた。  それは漠然としたもので、いわゆる〝虫の知らせ〟、と呼ばれるものだった。  紅理事長は〝最強の魔法使い〟を前にしても、一歩も退く様子を見せなかった。    その様子が、姫希の心に不安をもたらしていた。  階段を降りきってしばらく走ると、零と一華が見えてきた。  二人に駆け寄る。 「零、君……、大丈夫ッ?」 「う……?」    虚ろな瞳で零は姫希を捉えたようだ。 「姫希……、この、ナイフを、抜いてくれッ……!」 「え……? でも……、このナイフ、抜いちゃうと……」 「いいッ! どのみち、これが抜けないと、僕は、魔法を使えない……ッ!! 早くッ!!」    零の剣幕に、姫希は頷く。  短刀を引き抜いた。 「ぐっ……!」    零の身体から盛大に血が噴出した。  彼は素早く、回復魔法を使う。  姫希も手伝った。  やがて傷口が閉じ、血が止まった。  零は一華にも回復魔法をかけた。  一華は、まだ四式の支配下にあるのではないか、という心配は姫希の杞憂に終わった。
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