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「なんだか、にわかには信じがたい話だ……」
姫希から事の経緯を聞き、零は言った。
一華も同様だったようだ。
ただ感情が思考に追いついていないようで、戸惑っていた。
だが同時に、そうかもしれない、という心の声があった。
確かにあの理事長ならやりかねないかもしれないという想いが、強く零の裡に根づいていた。
「信じられないのは、私も同じ……。でも、本当のこと。お願い……、信じてッ……!」
「……分かった、信じるよ。姫希が言うんだから、間違いない」
「兄さん……?」
一華が怪訝そうにする。
「それより早くここから脱出しよう。嫌な予感がする。あの四式が負けるはずがないと思うけど、さっきから、彼女の魔力がどんどん弱まってる。……だから一刻も早く、ここから出よう」
零の発言に二人は頷いた。
三人が祭壇場から逆の方向へ駆けようとしたその瞬間、〝何か〟が高速で横切った。
ボン、と毬が弾むように転がり、停止する。
零は転がった〝それ〟に、素早く駆け寄った。
「――ッ!?」
それは先程の話題に出た四式波瑠綺、その人だった。
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