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気付くと四式の傍らには、虚ろな目をして佇む一華の姿があった。
意識が朦朧としているようで、だらんと両肩を下げ頭を垂れている。
どう見ても、正気とは思えなかった。
「四式、先生……。貴方、一華ちゃんに、何を……」
「人心操作の魔法だよ。御堂零を突き刺すように暗示をかけておいた」
淡々と事実のみを語った四式に姫希は戦慄した。
「どう、して……? どうして? 先生は、私たちの、味方じゃ、ないんですか……?」
「――それは私から説明しよう、十羽乃姫希君」
唐突に男の声が室内に響いた。この場に似つかわしくない声だった。
「彼女は我々、『暁の風』のメンバーなのだよ」
暗闇の奥から、カツンカツンカツンカツン、と足音を鳴らしながら男が歩いてくる。
スーツ姿に、ネクタイをしている。
壮年という割には、若々しいオーラを漲らせているその人物を、姫希は知っていた。
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