第四章一話

4/4
前へ
/24ページ
次へ
「紅……理事長……」    そう。  一度だけ会った事がある。  転校する前の手続きで、面談を行った相手。  人に強い印象を植え付ける人だった。 「うむ。憶えていてくれたのは僥倖だ。これから行う実験に、君は必要不可欠だからな。互いに名前を知っている方がやりやすい」 「実験……?」    姫希の疑問に、紅は「ふぅむ」と唸った。 「この場で説明するには、余り似つかわしくないな――四式君」    指をパチンとならす。 「彼ら全員を祭壇に移動してくれ」 「いいのか? 半死人だが奴もいるぞ」 「構わんよ。彼はもう何も出来まい。むしろ最後の手向けだ。何も知らないまま死んでいくのも、忍びないだろうからな」 「分かった」    四式が意味の取れない言葉を一言二言呟く。  刹那、崩落が始まる。  この場にあった証拠を消すように、建物が崩れていく。  そしてその場に居合わせた全員が消失した。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加