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「紅……理事長……」
そう。
一度だけ会った事がある。
転校する前の手続きで、面談を行った相手。
人に強い印象を植え付ける人だった。
「うむ。憶えていてくれたのは僥倖だ。これから行う実験に、君は必要不可欠だからな。互いに名前を知っている方がやりやすい」
「実験……?」
姫希の疑問に、紅は「ふぅむ」と唸った。
「この場で説明するには、余り似つかわしくないな――四式君」
指をパチンとならす。
「彼ら全員を祭壇に移動してくれ」
「いいのか? 半死人だが奴もいるぞ」
「構わんよ。彼はもう何も出来まい。むしろ最後の手向けだ。何も知らないまま死んでいくのも、忍びないだろうからな」
「分かった」
四式が意味の取れない言葉を一言二言呟く。
刹那、崩落が始まる。
この場にあった証拠を消すように、建物が崩れていく。
そしてその場に居合わせた全員が消失した。
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