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「少し昔話をしよう。――とある男の話だ。
誰よりも理想に燃え、それ故に絶望した愚かな男の話だ。
その頃の男はまだ若く、理想や野望に燃え、肉親である弟と次々とビジネスに転じて成功をおさめていった。
弟とは意見が合わず後々確執して疎遠になってしまうのだが、まあそれはいまはいい。
男は会社を興し、その中にいる社員と恋仲になる。まあよくある話だ。
その内彼女とは結婚して、赤子を授かった。
小さな私の大事な子供……。
だが、二人は帰らない人になる。原因不明の事故に巻き込まれて、ね……。
男は理由を追及した。当時、経済界でも有数の実力を誇っていた男はあらゆる手段で事件の真相を解明した。そして浮かび上がった驚愕の事実――」
「……魔法」
紅が一呼吸するための間を、姫希が繋いだ。
社会で起こる原因不明の事故の幾つかは、魔法使いが絡んでると零から聞いていた。
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