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「……それは、すごく、いい事だと思う」
零から両親の話はほとんど聞いた事が無い。
だが彼の両親らしい考え方だと、姫希は思った。
「ああ、まったく愚かで救いようのない望みだ。
そんなくだらない願いのために男の頼みを断ったのかと、落胆したよ。
それならば男の娘を生き返らせて欲しいという願いの方がよっぽど人の為になるとは思わないかね?」
「でも、死んだ人は、蘇らないって……」
聞いた事がある。死んだ人はどんな魔法でも決して生き返ったりはしないと。
紅は姫希の顎を持ち上げ、言った。
「それが可能なのだよ。男の研究をもってすれば。男の理論と、膨大な魔力をもってすれば、死者を生き返らせる事が可能なのだ。
……それを彼らは邪魔した。男の崇高なる願いを聞き入れてくれなかった。
不可能の一言で切って捨てた」
紅は忌ま忌ましげに言った。
「――そして起きたのがあの有名な〝常磐大火災〟だ。君も目の当たりにしただろう? 十羽乃」
四式が言った。
「あれは御堂零の魔力暴走ではない。人為的に引き起こされた、魔法実験の失敗なんだ。紅兄弟と御堂夫妻の間で起きた、ね」
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