第四章十三話

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「ころ、せ……。零……」    理事長は既に戦闘不能のようだ。  零は内心安堵する。  先程の一撃で倒せなかったら、危なかった。  零の魔力を吸ったあのナイフこそが、オール・イン・ワンを使えない零にとっての最大の秘策だったのだ。 「……貴方はまだ生きるべきだ。貴方も大火災で死んだ人達に、償って生きて欲しい……」 「ふざ、けるな……ッ! 私が、この私が……、凡百の連中に、謝罪しろと、いうのか……ッ!」    零は頷いた。  そして哀れなこの男を一瞥し、姫希の元へ向かう。 「死んで償う、なんて許さない。貴方も、生きて罪を、背負え」 「零……ッ! キサマッ……、零――ッ!!」    零は振り返らない。  十羽乃姫希を助ける。  ただそれだけを目指して、零は死に体で祭壇へ歩んでいった。    零は気付かない。  背後で蠢(うごめ)く者がいた事に、全く気付かなかった。
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