0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ころ、せ……。零……」
理事長は既に戦闘不能のようだ。
零は内心安堵する。
先程の一撃で倒せなかったら、危なかった。
零の魔力を吸ったあのナイフこそが、オール・イン・ワンを使えない零にとっての最大の秘策だったのだ。
「……貴方はまだ生きるべきだ。貴方も大火災で死んだ人達に、償って生きて欲しい……」
「ふざ、けるな……ッ! 私が、この私が……、凡百の連中に、謝罪しろと、いうのか……ッ!」
零は頷いた。
そして哀れなこの男を一瞥し、姫希の元へ向かう。
「死んで償う、なんて許さない。貴方も、生きて罪を、背負え」
「零……ッ! キサマッ……、零――ッ!!」
零は振り返らない。
十羽乃姫希を助ける。
ただそれだけを目指して、零は死に体で祭壇へ歩んでいった。
零は気付かない。
背後で蠢(うごめ)く者がいた事に、全く気付かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!