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だが、有り得ない。
崩落した場所で彼は埋もれた筈だ。
だから、有り得ないんだ……!
「――ッ!?」
突如炎が吹き荒れる。
業火を纏った蹴りが零を穿つ。
灼熱の痛みが零を襲った。
「よおぉ、御堂……! 地獄から、舞い戻ってきたぜ――ッ!!」
斜交時雨……!
残忍で獰猛な笑みを浮かべながら、彼は現れた。
零が消した魔法疑似装置のスイッチを斜交は再び入れる。
零は彼が装置の起動をした意味を知る。
「お前……!! その胸の装置は――」
斜交はニヤリと嗤った。
「そう。紅の野郎が使ってたモノだよ。死んだ奴にはもう必要ないだろう?」
死ん、だ……?
「お前……一体、いま、何て言ったんだ……?」
時雨は不快そうに眉を顰(ひそ)める。
「? 死んだって言ったんだ。殺せ、殺せって喚いてたから俺が止めを刺しといた」
淡々と、それが自然の営みのように時雨は話す。
まるで自分は殺人を行うのが当然だというように。
零は時雨に一つの疑念を抱いていた。
人間として正しい行いを――斜交時雨は殺人という行いを、自らのアイデンティティとしているというのだろうか。
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