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紅理事の〝ザ・ゴッド〟を時雨は使いこなしている。
どうやら蒼時はあくまでもただの人で、あの身体能力の高さは疑似魔法装置にあったことが証明された。
だとしたら厄介だ。
あの円盤の機械が能力増強の装置だというならば、いまの時雨に零は立ち向かえない。
奴の実力は折り紙つきだ。
〝ザ・ゴッド〟の認識阻害を使われれば、為す術がない。
もう、紅理事を貫いたナイフにも魔力は残存していない。
零自身も魔力はほぼ尽きかけている。
時雨は零を蹴り飛ばす。
そして悠然と姫希の元へ寄り、首を掴み高く掲げる。
「何、を、する気、だ……」
「あぁ? 前にも言っただろ?
……お前は俺の全てを奪った。家族も友人も過去も、全てを。
だから俺もお前から奪わなければいけねえ、全部ッ!! この手で握り潰してやるッ!!」
ググッと時雨の五指が姫希の皮膚に食い込んでいく。
――肉を抉り、骨を砕くつもりだ。
ヤメロ……! ヤメテクレ……ッ!!
零は声なき悲嘆を絶叫する。
心の底から願った。
自分はどうなってもいい。
だから、だから彼女だけは助けてくれ、と。
だがそんな零の内心を知ってか知らずか、時雨は嘲笑を滲ませる。
――骨が軋んだ音がした――
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