第四章十四話

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 紅理事の〝ザ・ゴッド〟を時雨は使いこなしている。  どうやら蒼時はあくまでもただの人で、あの身体能力の高さは疑似魔法装置にあったことが証明された。  だとしたら厄介だ。  あの円盤の機械が能力増強の装置だというならば、いまの時雨に零は立ち向かえない。  奴の実力は折り紙つきだ。 〝ザ・ゴッド〟の認識阻害を使われれば、為す術がない。  もう、紅理事を貫いたナイフにも魔力は残存していない。  零自身も魔力はほぼ尽きかけている。  時雨は零を蹴り飛ばす。  そして悠然と姫希の元へ寄り、首を掴み高く掲げる。 「何、を、する気、だ……」 「あぁ? 前にも言っただろ?   ……お前は俺の全てを奪った。家族も友人も過去も、全てを。  だから俺もお前から奪わなければいけねえ、全部ッ!! この手で握り潰してやるッ!!」  ググッと時雨の五指が姫希の皮膚に食い込んでいく。  ――肉を抉り、骨を砕くつもりだ。  ヤメロ……! ヤメテクレ……ッ!!  零は声なき悲嘆を絶叫する。  心の底から願った。  自分はどうなってもいい。  だから、だから彼女だけは助けてくれ、と。  だがそんな零の内心を知ってか知らずか、時雨は嘲笑を滲ませる。  ――骨が軋んだ音がした――
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