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老若男女、善悪を自らで判断し、人助けをしてきた。してきたんだ……。
「いつまでそうしているつもりだ、零」
唐突に声が降り注ぎ、零は面をあげた。
「し、ししょ、う……?」
そこにいたのはかつての零の師匠がいた。
全身を黒のコートでおおい、帽子を目深に被る。
ロングストレートの赤毛をたなびかせ、不敵な笑みを浮かべている。
「久しいな、零」
かつての弟子を、慈しむような眼差しでみつめ、そして――蹴り上げた。
「……情けない。何だその成りはッ! 無様の一言に尽きる!」
もんどりがえる零に容赦なく罵声が降り注ぐ。
零の脳裏には彼女との過ごした幸福で地獄の日々がよぎる。
「この偉大なる魔法使いの弟子がこの様では私の名声も地に落ちたな……。何のために私が貴様に魔法を教えたと思っておるのだ!」
「で、ですけど……」
「口答えするなッ!」
雷撃を帯びた鉄拳が零のみぞおちに入る。
呻く零に驟雨の如く彼女の愛ある拳が浴びせられる。
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