第四章十三話

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「魔法は神を欺く力。科学は神を冒涜する力。  仮に神という存在がいるとしたらどちらを祝福すると思う?  自らを欺く者か? それとも自らに迫る者か?  私が神ならば、立ち向かってくる者を歓迎するがね」  違う、と零は心の中で呟く。  魔法は神を欺く力などではない。  あくまで自然の力を取り込んで現象させる力だ。  断じて神を騙したりはしない。  神話にもあるように、神に迫った人間は翼をもがれて地に墜とされた。  科学こそ――いや、蒼時の思想こそ傲慢だ。  零は身体能力強化の魔法をとなえ、蒼時の動きを目で追う。  だが彼は零を嘲笑うように姿を消し、拳を見舞ってくる。  地にひれ伏しながら零は思考する。  理事長の魔法疑似装置の正体を。  その在り方を。    瞬間移動のように消失し、認識した途端に攻撃をくらう。  ……そう、認識だ。  認識が欠如している。  人は相手を知覚してから認識する。  そして初めて相手を捉える。  蒼時の〝ザ・ゴッド〟という能力は、認識するのが一拍遅れる。  それが四式のいう『時が加速する』と言わせたのではないだろうか?  零の眼前に蒼時が立つ。
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