第四章十三話

5/8
前へ
/32ページ
次へ
 と、同時に零は駆けた。祭壇へと続く階段へと。 「なっ――!?」    零の予想外の行動に、現出した理事長が驚く。  当然自分に立ち向かってくると思っていた零が、姫希への元へと駆けつける事は彼の範疇から外れていたようだ。 『三十六計逃げるにしかず』という言葉があるように、理事長を倒す事は目的ではない。  本当の目的は十羽乃姫希を救出し、疑似魔法装置を破壊することにある。  紅蒼時を倒すのはあくまで不随する問題だ。 「見損なったぞ、零! この場に及んでそんな下策をとろうとは!!」    何とでも言ってほしい。  僕は貴方を倒す事が目的じゃない。  ある種の高揚感を持って、零は階段を駆け上がる。  そして目的地である祭壇につくと、当然のように理事長が待ち構えていた。 「くそっ……やっぱり駄目か」 「当然だ。貴様の速度に私が追いつけないはずがなかろう」    じりじりと理事長はにじり寄ってくる。 「御堂夫妻の子供とは思えない行動だ。酷い短絡な作戦だったな」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加