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零は覚悟を決めて、理事長に吶喊する。
駆けだした直後、理事長の姿が消失する。
眼前に彼が現れ、零の腹部に強烈なブローを浴びせた。
零は不自然なまでに後方――宙に浮き上がる。
理事長もまた止めとばかりに、後方へ落ちていく零に向って飛んだ。
この高さから叩きつければ、零も無事とて済まない。
そう思って蒼時は零に迫ったのだろう。
だがそれは――間違いだ。
「これで終いだ、零!!」
零は全神経を理事長に集中させる。
彼の一挙手一投足に目を配り、筋肉、呼吸、瞳孔の動きすら把握する。
零はある異変に気付いた。
流れる時間がスローモーションに感じる。
そう。
まるで時が停止したように。
時の止まった世界にいるような、奇妙な感覚だった。
これがアスリート達がごく希に体験する〝ゾーン〟と呼ばれる領域なのだろうか、と零は思う。
理事長の拳が肉迫するが、すんでの所で躱す。
蒼時は舌打ちしながら、階下へと落ちていく。
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