第四章十三話

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 ――待っていた。  この瞬間を待っていた。  浮遊状態というある種の無防備状態を、ただこの瞬間だけを待ちわびた。  零は懐に携えていた、短刀を――零の魔力を思う存分に貪った短刀を取り出し落下していく蒼時に向かって放った。  蒼時が零を――短刀を凝視する。 〝ザ・ゴッド〟の認識欠如など無意味。  既に零は理事長に狙いを定めている。    仮に彼が〝ザ・ゴッド〟を使っても、空中で彼は動くことはかなうまい。  宝石をはめ込んだ短刀は、一直線に蒼時に迫り――貫いた。  彼の心臓を。  円形の装置を、穿った。  ため込んだ魔力があふれ出て、荒れ狂う暴風が吹き荒れる。  蒼時は稲妻に撃たれたように痙攣し、断末魔を上げ、地に落下していった。  ズタボロになった理事長に零は近付いた。「う……」  良かった、生きている……。  零自身も満身創痍で、既に魔力は枯渇しかかっている。  両親の形見であるナイフを零は引き抜いた。
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