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「あ?」
「『アイスメイル』」
しかし、ディオの放った魔法はクオリスに一撃を与えることはなかった。アリスの声がディオの魔法のあとに紡がれていた。クオリスの全身を覆う氷でできた鎧、それに触れたディオの魔法は氷付けになり、砕けて消えた。
「なるほどね、お前より先にあの女をつぶさなくちゃいけないわけだ……」
「やらせるわけないじゃないですか……アリス!!」
「うん、出てきて、『セルシウス』」
アリスの言葉とともに、足元に展開される水色の魔方陣。彼女に寄りかかるように水色の肌の、人間に似た女性がその姿を現す。
「名前つきか……」
グレンは戦闘を見ながらつぶやいた。人間は精霊と契約して初めて魔法を扱うことができる。精霊のなかには名前つきと言う強力な力を持つ精霊も存在していた。
「『セルシウス』氷壁を私の周りに」
『セルシウス』はアリスの言葉に頷き、ゆっくりとした動作で、地面に手をつく。すると、アリスの周りに瞬く間に何十もの氷壁が出現し、行く手を阻む。
「氷壁があって魔法はとどかねえな……でもそれはお前も同じだよな?」
「ええ、ですがそう簡単にアリスの『アイスメイル』が―――」
「クオリスっ!避けて!!」
普段ならば絶対に聞かないようなアリスの大声、クオリスの目の前が一瞬で、赤に染まる。耳に響くのは爆音、クオリスの全身を爆炎が包む。
「『フレアボム』」
大鎌に寄りかかるように立ちながら、炎に包まれるクオリスを眺めるディオ。アリスはそんな彼を信じられないものを見る目で見ていた。
「契約精霊が、二体」
「ざんねんながら名前つきではないけどな」
通常、契約精霊は一体である。だが、ディオは二体の精霊と契約していた。予想外の一撃にクオリスの体を守っていた氷の鎧は燃え尽き、炎の魔の手はクオリスにまで及ぶ。
「熱い」
クオリスは炎に包まれながら立っていた。
「は?」
ディオは何が起こっているのか理解できず、一瞬の隙が生まれる。その隙をクオリスが見逃すことはなかった。
「はあああっ!!」
炎に包まれながらディオに向かってロングソードを振るう。ひねりを加え、横なぎに振るわれたロングソードにクオリスに纏わりついていた炎が移る。
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