第十三部隊

12/16
前へ
/58ページ
次へ
 クレイは二人を抱え、兵舎二階に来ていた。第十三部隊の面々は一部を除いて二階にある部屋で寝泊りしている。  二人も人間を抱えているというのに、まるで重さを感じさせない足取りでクレイはひとつの部屋に入る。その細い体からは想像できないが、軽々とクオリスをベッドの上に横たえた。  まだ意識が戻っていないのを確認し、その部屋を後にする。アリスを抱えたままクレイはその隣の部屋へと足を運んだ。  部屋主がいなかったその部屋は綺麗に掃除が行き届いており、埃ひとつ見受けられない。足音を立てずにベッドまで近づき、アリスをやさしくベッドの上に横たえた。クオリスのときとは違い起こさないよう、細心の注意を払っているのが伝わる。 「おに――ん」  気絶しているはずのアリスの口から言葉が飛び出し、クレイの動きを止める。しばらく寝かしつけた体制のまま動きを止めるが、先ほどの言葉は寝言だと判断し、アリスから離れる。  呼吸をしていることを知らせている上下に動く胸に一瞬視線を向け、寝ていることを確認。 「随分、重くなった」  その呟きをを残し、クレイはその部屋を後にした。やはり出る際も足音など立てないように細心の注意を払いながら。  クレイがアリスの部屋から出て行ったとき、クオリスは目を覚ました。ゆっくりと体を起き上がらせ、自身の体の怪我を確認する。 「傷がない、魔力の痕跡……治癒魔法か」  珍しいな、と思いながらクオリスはもう一度ベッドに身を横たえた。見上げる天井に見覚えはあるはずもなく、自分が新しい場所に来たことを再認識した。 「やっぱ強いな」  思い出されるのは先ほどのディオとの戦闘。軽々と扱われていた大鎌、扱いづらい武器をまるで手足のように扱っていたディオの動きが脳内で再生される。  服の中からペンダントを取り出し、それを指でつまみながら、脳内で戦闘を繰り返す 「これからやっていけるかな」  そのクオリスの言葉に答えるように、猫の鳴き声がクオリスの脳内に響く。微笑を浮かべた後、クオリスはもう一度意識を手放した。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加