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かすかな香りが鼻腔をくすぐる。アリスは階下から漂ってくる匂いで目が覚めた。体を起こし、周りを見渡す。見覚えのない部屋、ベッドの近くに設置してある窓からはオレンジの夕日が差し込んでいた。
「そっか、今日から配属されたんだもんね」
そこまで広くない部屋には事務机とベッドが置かれている以外アリスの荷物が山積みにされているのみ、埃等が見受けられないため掃除が行き届いているのがわかった。
部屋を見渡していると、ひとつしかない扉からコンコンと来客を知らせる音が届いた。
「はい」
「あ、アリスちゃん起きた?」
来訪者はアルであった。扉を開けて入ってきたアルは白いエプロンを身につけ笑顔を浮かべている。
「どう?体に違和感とかはない?」
「はい、大丈夫です、あの、さっきの模擬戦ってどうなったんですか
?」
「アリスちゃん達負けちゃったわ」
「そう、ですか」
脳裏に浮かぶ先ほどの戦闘。自分はほとんど何もできていなっかったことが頭をよぎる。
「ふふ、若いわね」
「え?」
「大丈夫よ、クオリス君と一緒に強くなっていけば。一応この部隊問題児集められてるけど、みんな騎士団結構長いんだからね?」
アルはウインクしながらそういった。騎士養成学園ではほとんど負け知らずだったクオリスとアリスの二人。第十三部隊に配属され初めて負けた。同期だったほかの生徒たちも同じような気持ちなのだろうか。
「ふふふ。アリスちゃんに初任務です。」
「え、はい」
「クオリス君起こして下に来てね」
アルはそれだけ言い切ると、アリスの部屋を後にした。アリスは寝ぼけ眼ながらも起き上がり、服に乱れがないかチェックし、ポケットから棒つきキャンディを取り出し、包装紙をとって口に銜えた。
「クオリス、起きるかな」
最初お任務が難関であることを知っているアリスはゆったりと歩き出す。自分の部屋の扉が閉まると同時に隣に位置するクオリスと書かれた扉をノックした。
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