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第十三部隊専用兵舎で生活するようになり、早二週間の時がすぎていた。日はすでに頂点に達し、帝都からは商人や買い物客の賑やかな声が聞こえてくる。
「はあああっ!!」
「甘い」
第十三部隊専用兵舎の地下には広い訓練場が設けられていた。そこには二人の人物が己の武器をぶつけ合う。
クオリスのスピードの乗った一撃は、グレンの片手で防がれてしまう。その身の丈程の大剣を軽々と片手で操るグレンは、クオリスと何ら遜色ないスピードで大剣を振るう。
「くっ!」
ロングソードでその一撃を防ぐものの、重さと速さの乗ったその一撃に、クオリスの体は軽々と吹き飛ばされた。
「ふぅ、疲れた。クオリス戻るぞ」
離れたところで大の字になっているクオリスに向かって声をかける。疲労が見て取れるクオリスは、体を億劫そうに起き上がらせた。
「隊長、体が動きません」
「魔力張り巡らせろ、それで何とか動くはずだ。ちなみに魔力を体に張り巡らせている状態を『身体強化』と言う。人間が唯一精霊を介さないで使える魔法ってところだな」
「隊長、そんなのどうやって知ったんですか?学園とかじゃ教えてくれませんよね、一般でも知られてないような」
「だって、俺が見つけたんだし、がむしゃらに訓練してて体がピクリともしなくなったときがあってな、そんときにやったらなった。」
「あ、ほんとだ、なった」
先ほどの訓練のときよりも体が動きやすいことに気づく。グレンはクオリスを見ながら何故か頷いていた。
「うん、普通は一回じゃ、なんないんだけどな。ディオもいまだにできてないし」
「え」
「ディオの前では隠しとけ、嫉妬されんぞ」
ケラケラと何がおかしいのか笑うグレン。ディオの怒り顔が脳裏をよぎり、全身を巡り回っていた魔力が途切れる。グレンの足元で倒れたクオリスは顔を少し傾けてグレンに告げた。
「後は頼みます」
「え」
「だって、いつも運ばれてた俺がいきなり歩いてきたら疑われますよ。だからお願いします」
グレンはため息を吐きながら、クオリスの体を軽々と持ち上げ、地上へと続く階段を上り始めた
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