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「墓荒らし?」
クオリスの手の中にある資料にはそんなことが書かれていた。視線は文を追い、今回の任務を頭の中に移しこんでいく。
「こっちは行方不明者についてだ」
もう一枚の資料に目を通しながらディオがつぶやいた。そのつぶやきに先ほどまで騒いでいたクレイの動きが止まる。
「墓荒らしの方は私聞いたことあるよ、なんでも雨の日に女が六地区にある墓所を徘徊してるんだってさ」
「アリス、それどこ情報?」
「八百屋のおっちゃん」
キャンディを指先でつまみ、クレイからもらった紅茶を口に運ぶ。
「ふーむ、よし、クオリス、アリス、二人は墓所のほうに当たってもらおうか、ディオ、クレイとお前は行方不明者のほうだ」
グレンは紅茶もコーヒーもあきらめ、部隊の隊長としてクオリスたちに指示を出す。
「クオリス、アリス、お前たちは第十三部隊に所属してからの初めての任務になる。いくらでも俺やアル、ディオたちを頼れ」
「そうよ、怪我とかしないようにね。ディオ君たちも」
グレンの横にアルが立ち、いつものやさしげな微笑を浮かべながら四人を見た。ディオとクレイは余裕を感じられる。が、初任務と言われたクオリス、アリスの二人からは、ひそかな緊張感が感じ取られていた。
「ま、期限とかはそこまで気にしなくていい、できる範囲で調べて来い、報告は忘れるなよ」
「「了解!!」」
四人の声が第十三部隊専用兵舎の中に響き渡る。順にそこから出て行く四人を見送り、兵舎の中にはグレンとアルの二人だけになった。
「クオリス君とアリスちゃん大丈夫かしら……」
「まあ、大丈夫だろ」
「またそんな適当言って……メルちゃんのときもそんなこと言って見送ったけど、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって、現にメルディスからはちゃんと手紙が届いてるだろ?あいつらはメルディスと違って帝都ないでの任務なんだから腹が減ったら戻ってくる」
ケラケラと笑いながらグレンは自分のいつもの席に腰を下ろす、そんな彼の姿を見て、アルはいつものようにため息をこぼすのだった。
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