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「墓荒らし、か」
街に出てきたクオリスとアリスの二人は墓所のある六番地区を目指していた。帝都には三カ所の墓所がある地区があり、最初の目撃情報が六番地区だった為、二人はそこを目指していた。
クオリスの肩には真っ白な毛並みの猫が丸くなり、手足の間に顔を埋めている。
「お墓を掘り起こして何がしたいんだろうね」
コロコロとキャンディを転がしながら棒を摘まむ。街中にはさまざまな露店が出ており、そこに並べられる果実に目を奪われる。
「さあ、お前はどう思う?」
自身の肩の上で寝息を立てる白い猫に話しかけるが、帰ってきたのは規則正しい呼吸音。精霊であるはずのその白い猫に睡眠が必要なのかはわからないが、クオリスの投げかけた言葉はにぎやかな街の雰囲気にまぎれて消えた。
「一番最初に目撃あったのが一週間前……確か、大雨が降ってたときだね」
「それから一日おきに目撃情報があるな、なんでこの目撃したやつは飴の日に墓なんて行くんだろうな」
「さあ?」
気にもならないのか、資料を見ながら人ごみを歩く。前から人が来たとしても、二人の身に着けているライトアーマーを見て横によけていく。
騎士団専用であるそのライトアーマーは胸の部分に装飾されているエンブレムによって配属されている部隊がわかるようになっている。クオリスたち第十三部隊のエンブレムには黒猫が使われていた。
不吉と言われる黒い猫を胸に飼う第十三部隊は民たちから敬遠されがちであった。
「そろそろ墓所だよな?」
「うん、あ、クオリス前」
「きゃっ!?」
アリスの指摘は少し遅く、資料と地図に視線をさまよわせていたクオリスは前方からの接近に気づかず女性にぶつかる。
女性のほうも、前を見ていなかったのかクオリスの接近に気づかず、お互いにぶつかり、女性はその衝撃からか転んでしまいそうになる。
「おっと」
それをすかさずクオリスが女性の手を引くことにより難を逃れた。
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