プロローグ

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「アリスさん?もう少し心配してくれてもいいんじゃないですかねぇ……」 「だってクオリス頑丈だし」  アリスと呼ばれた少女は金髪の少年―――クオリスに向かってそう告げた。その答えを予期していたのか、はたまた、最初から気の利いた言葉を期待していなかったのか、クオリス・クォーツは盛大にため息をこぼしながら瓦礫から立ち上がる。 「ガルムー!無事かぁー!」  反対方向の瓦礫に向かってクオリスは言葉を投げつけた。その言葉に反応するかのように瓦礫が崩れ、白髪の少年がその姿を現す。 「もう少し手加減してくれよ」 「勇者様相手に手は抜けないでしょ」  一瞬でクオリスとアリスの近くに姿を現すガルムと呼ばれた少年。近くで見るとその整った顔立ちがはっきりとわかる。 「オルスタニア君、準備できたみたいだよ」 「ありがとうサイスさん……クオリス、最後に君と手合わせできてよかった」  そういってガルムは自身についた埃をはたきながらクオリスに笑みを向ける。改まって言われるお礼の言葉に恥ずかしさを感じながらも、それをごまかすように鼻先を掻くクオリス 「最後じゃないだろ、またやろう」 「……ふふ、そうだねまた」  どちらともなく手を差し出す。二人は硬い握手を交わし、お互いに恥ずかしそうな笑みを浮かべるのだった。 「オルスタニア君、こんなんと仲良くしてくれてありがとう」 「こちらこそだよサイスさん、君たちのおかげで楽しい留学生活だった。こっちで学んだ戦闘方法とかは次の旅できっと僕の力になってくれるよ」  アリスとも握手を交わしながら笑顔を交わす。眠たげな表情を浮かべている彼女の表情にも、どこか笑顔のような雰囲気を感じられた。 「オルスタニア様馬車の準備ができました」  執事の格好をした初老の男性が腰を深く折り、綺麗なお辞儀をした後に言った。闘技場へと続く入り口付近にはガルム・オルスタニアの母国、『グリシア聖国』から派遣された騎士団が綺麗な列を作り上げていた。
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