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「すみません、大丈夫ですか?こちらの不注意で……クオリス、謝る」
「すみませんでした!!」
大きな声でクオリスは頭を下げた。女性はそのクオリスの行動に驚き戸惑う。周りからの視線もお構いなしにクオリスは頭を下げ、アリスもまたそれに習った。
「そんな!!こちらも前を見ていなかったので頭を上げてください!!騎士様にあたまを下げさせるなんて……」
女性の言葉に二人はようやく顔を上げた。二人の前に立つ女性は顔色が悪く、線も細い。顔立ちは整っており、おそらく、すれ違えば男性はみな振り返るだろうと思われるほどの顔立ちであった。
「わー、すごい美人」
「まったくだな」
「そ、そんな……」
クオリスとアリスの素直な言葉に赤くなる女性。ぶつかった拍子におきてしまったのか、クオリスの肩で寝息を立てていた白い猫はゆっくりとその頭を上げ、ジッと女性に視線を向けた。
「あら?白い猫?珍しいですね」
「かわいいでしょ?ただ、なついてはくれていないんですけどね」
クオリスが指を猫の口元に持っていく、が、まるで興味がないとでも言いたげにそっぽを向いた後、また頭を手足の間へと埋め込んだのだった。
「あ、すいません、いきなりなんですけど墓所の場所ってわかりますか?」
「墓所、ですか?それだしたら、私も墓所に用事があるのでご案内しましょうか?」
「いいんですか?」
アリスはその申し出に少し驚きながらも女性に再度聞き返す。クオリスはその女性にもう一度視線を向けた。
淡い紫の長髪がそよ風にゆれ、香水の香りが鼻腔を刺激する。その強い刺激に一瞬顔をしかめるも、ほんの一瞬。女性に悟られぬようにポーカーフェイスを保つ。彼女の持つバスケットからはほのかに料理のにおいが漂ってくるが、それも香水のにおいにかき消されてしまう。
はみ出た花はこれから向かおうとしていた墓所で供えるものなのだろう。
「アリス、お願いしよう」
「え、うん、えっと……」
「マロンです。マロン・ネサーク」
「それじゃあ、よろしくお願いします。」
こっちです、と言うとマロンと名乗った女性は歩き出した。その後に続く形でクオリスたちも歩き出す。
肩で眠る白猫は香水がくさいとでも言うように、不快そうに鼻を鳴らした。
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