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マロンにつれられ、歩くこと数十分。六番地区は墓所に近づくにつれ、人通りが少なくなっていた。
「墓荒らしの噂が出る前はもう少し人がいたんですけどね」
複雑そうな表情を浮かべながらマロンはつぶやく。女性二人の歩幅に合わせるために後方からゆったりとした歩調で二人を追うクオリスからはマロンの表情がわからない。隣を歩くアリスは彼女の顔を見ながら尋ねる。
「マロンさんはなぜ墓所に?」
「……母が、眠ってるんです。家族は私しかいなかったもので……毎日顔を見せないと寂しがるかなって」
そんなことないですよね。そう言いながら微笑んだマロンの表情が、アリスには悲しげに見えた。
「やさしいんですね」
「そんなことないですよ」
キャンディを舌の上で転がす。すでに形は崩れ、大きさもほぼないに等しい、甘いはずのそのキャンディの味が、どこかつらく、苦いものに感じた。
「マロンさんは毎日墓所に行ってるんですよね?大体何時ごろに向かっているんですか?」
「そうですね、大体今の時間帯ですよ?最近は雨の日があったりしていけない日もありましたけど」
クオリスは考えるように顎を指でなぞる。黙ってしまったクオリスを不思議に思ったのか。マロンは肩越しに視線を向けてきた。
「あ、マロンさんは墓荒らしを目撃してないのかなと思いまして」
「そうですね、墓荒らしって雨の日に出るじゃないですか、それもあって雨の日は家から出ないようにしているんです。」
クスっと笑みを浮かべるマロン。
「やっぱり、墓荒らしとかは怖いですか?」
「そうですね、女一人だとやっぱり怖いですよ」
「そうだよ、クオリス、女の子が一人でお墓に行くのっだって怖いのに、墓荒らしなんて出たら余計怖いに決まってるでしょ」
「はい、すいません」
「ふふふ、仲がよろしいんですね、あ、ここです」
落ち着いた雰囲気で笑うマロンに見とれるクオリス。その腹部をアリスの拳が襲い、蹲る彼を無視してアリスはマロンの元へと向かった。
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