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「はあ……」
アリスは、こぼれ落ちるため息を隠すことができなかった。クオリスが問題を起こした後、卒業前にひと悶着あったが、無事に二人は卒業することができた。
「よりによって、十三部隊かあ……」
問題児をあつめ、構成されているという噂の第十三部隊への配属が決まり、あがらぬモチベーションのまま入隊の日を迎えた。目の前には第十三部隊専用兵舎がその姿を見せていた。
見るからにすぐに壊れてしまいそうなそのたたずまいに、さらに気分が重くなっていく。城下から離れた山の中にあるその兵舎からは人の気配と言ったものを感じ取れない。
「クオリス、遅いし」
いまだ姿を現さない幼馴染兼パートナー。口に銜えた小さくなったキャンディを噛み砕き、ごみとなった棒を持ってきていたゴミ袋に放り込む、ゴミ袋の中には、すでに数本の棒が放り込まれていた。
ポケットから新たなキャンディを取り出すと、包装紙を破きキャンディを口に銜える。
「おーい、アリスーおはよう!」
「おはようじゃない、おそい」
クオリスが現れたのはそれから数分のことだった。一通りの日用品と衣服をつめたであろう鞄をひとつ背負い、腰にはシンプルな装飾のロングソードが一振りぶら下げられている。
「アリス……荷物多すぎないか?」
「多くない、重いからもって」
「それは多いからじゃないんですかねぇ……」
アリスの後ろには五個ほどの鞄が積み上げられていた。しぶしぶと言った様子でクオリスが四つの鞄を持ち上げる。
「一個くらいは持ってくれ」
「うん」
彼の言葉にうなずくと、残された鞄を背中に背負い、クオリスの隣に立つ。腰にぶら下がる二丁の魔法銃がゆれた。
「うし、いくか」
「うん」
二人で顔を見合わせ、第十三部隊専用兵舎の中に歩を進めた。近づいていくにつれ、ボロボロだと思われた外観が表面だけだとわかった。
中に入ってみると外との違いがはっきりとわかる。外から見たときには穴だらけのように見えていたのだが、中にはそんなもの一切見受けられない。
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