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「あっ、あ!」
舌っ足らずな可愛らしい幼子の声、大きくなるエンジン音で不安になってきた。
飛び出したりしないよな?
琴梨に一言断ってから通話を切り、早足に歩きながらポケットに入れる。公園を覗き込むと小さな女の子が居る。ゆるゆる転がるボールを追い掛けては足で蹴ってしまいまた追い掛けるを繰り返していた。見た所一人、大人の人は見当たらない。
そのままボールは道路に出てしまった。ここまではいい、トラックが来ていない道だから。問題はここからだ。
道路が斜めになっていたのかボールはコロコロと十字路の真ん中へ転がっていく。必死に追い縋る小さな女の子を見て、左右確認をしないなとちょっとした未来予想。急いで小さな女の子に近付く。
十字路の真ん中を転がるボールを追って飛び出そうとする小さな女の子の肩を緩く掴んで止める。ビックリしながら振り返る小さな女の子。直後に大型トラックが結構な速度で通過していった。あぶねぇ。
未だ落ち着きなく見上げてくる小さな女の子と目線の高さを合わせる。
「トラックが来たのは分かったかな?」
小さな女の子は頷いた。
「事故に遭ったら大変だから、面倒でも道路に出る時は左右の確認。いい?」
またも頷いた小さな女の子の頭をひと撫でし、無事に向こうまで転がっていたボールを代わりに取りに行く。何事もなくボールを返し、改めて帰路についた。
携帯電話を取り出してコール、相手はすぐに出た。
「悪い、ちょっと緊急事態でな」
『どうせ人助けでしょ?なんだったの?迷子?』
「交通事故を未然に防ぎました」
『は?』
軽くさっきの事を説明して反応を待つ。
『親何処行ったし』
「さあ。この時間帯だし、夕飯の準備じゃないか?子供にはすぐ帰ってくるように言って」
『そこってちょっとした事故多発ポイントじゃないの?大丈夫なのその子』
「どうだろうな。小さい内はちゃんと言って聞かせれば分かってくれるから、次からは左右の安全確認すると思うけど」
『大きい子は反って反発するからね。授業中二・三人で出歩いてウイーとか言ってるし』
「大丈夫かその学校」
『さぁね。そういう事する人の考えなんて理解できないし。そもそも言語が意味不明だし』
「語尾が『さー』とかもか?」
『あれは耳障り。一回ならまだしも句切る度に言われると凄く耳障り』
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