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横たわる妻の身体を見ながら、めぐむは少年の時に見た海に浮かぶ孤島を思い出していた。カーテンの隙間からそこへと光線が当たっている。朝だ。
まだ眠っているあおいの胸の付け根に手を添えて、頂上に向かってゆっくりと丘を登らせる。
めぐむは、今なぞっている服と皮膚の向こうに確固たる世界があって、ほとばしるいのちがあることを不思議に感じていた。
何故か自分たちの正反対で暮らすブラジル人の夫婦もいまこうして「仕組み」を確かめているのではないか、と思った。
あおいの鼓動か「ナゾ」の鼓動かは知れぬが、とくん。というそのリズムは力強さをもって伝わってくる。
なんて暖かな血液の循環!
あおいのお腹からめぐむの指先へ伝わった鼓動は彼の手首を通り腕へ、さらに肩へ流れた。そして右肺を過ぎた辺りで、自らの鼓動と混ざった。
いま、この夫婦の間には
とんでもない生命の力があった。
そうしてめぐむの指先が頂上から降り始めた頃に、あおいは目覚めた。
「う、イテテテテテテ。」
妊娠7ヶ月に差し掛かった辺りから、あおいはこの「イテテテテテ」が口癖のようになっていた。陣痛のときはもちろん立ち上がるときも横になるときも、「イテテテテテテ」と言った。
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