第1章

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 新聞に書かれた文字を指さして尋ねてくる少女に、苦笑しながら「さぁ、どうかな」と夢霧は誤魔化した。なぜなら夢霧にとってこの事件はあまり思い出したいものではなかったからだ。  この少女の言うとおり、新聞の記事に書かれている女子高校生とは私のことだろう。しかし、私にとっては一生抱えていかなければならない過去であって、名誉なことではない。たった一人の大切な親友を亡くしてしまった、悲しい事件。一生消えない傷ができてしまった。もうこれ以上、私の好き勝手な行動で、他人を傷つけることはしたくはない。  黙ってしまった夢霧を、不思議そうに見ていた少女は夢霧に声をかけた。 「あの……それで、解いてほしい事件のほうなんですが……」 「悪いけど、他をあたってくれないかな」  先ほどとは比べ物にならないくらい、冷たい声で夢霧は呟いた。夢霧の態度の変わりように少し驚いた少女は、さっき見せた事件が夢霧にとってはあまり思い出したくなかった事件だったことに気づき、 「わ、かりました。他をあたってみます」  と、頭を下げ、夢霧とは真反対の方向に向き歩いて行こうとした。  しかし歩こうとした時、いきなり見知らぬ男に肩を掴まれてしまい、少女は動けなかった。少女は、肩を掴まれている手を振りほどこうとしたが、それより先に夢霧が男に近づき男の手を払いのけると、言った。
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