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「何の真似だ……まっつー」
男は、殺気剥き出しの夢霧を見てくすりと笑い、
「そんなに花音のことを思い出したくないのか……?夢霧」
と、夢霧の心を見透かしたように言った。
花音。
少女は、この名前に聞き覚えがあった。さっき取り出した新聞のニュースに載っていた「連続殺人事件」の、被害者の一人だったはず。本名は……確か灰木花音。少し有名な企業の一人娘で歳は十八歳。死因は……。
少女が花音という女のことを思い出している間、夢霧と男は睨み合っていた。
「……だったらなんだ。」
夢霧が吐き捨てるように言うと、男は少し肩の力を抜いて、
「もう過ぎたことだろう?忘れろとは言わないが、少しくらいお前のやりたいことをやればいいじゃないか。」
と、言ったが夢霧は、悔しそうに顔を歪め、
「…過ぎたことでも、つらいんだ。」
と、呟いた。
そんな夢霧の様子を見て、これ以上まともな話はできないなとため息をついた男は少女のほうに向き直すと、
「君が解いてほしい事件って、どんな事件なんだ?」
と聞いた。少女は急に話しかけられて少し驚いたが、はっきりと目の前にいる男に告げた。
「ある通り魔事件なんですけど…。」
「なんでその事件を調べようとしている?」
少女の言葉をかぶせるように男が聞いてきた。あまり言いたくないところを質問され、少女は少し戸惑ったがそれでも男のほうをきちんと向き直して、言った。
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