第1章

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「私の両親を奪われた事件だから……」  その回答が、男と夢霧を驚かせた。  黙ってしまった男に、少女は心の中でため息をつく。まただ。また、同情されるんだ。いつもいつもこの事情を言うと、皆が憐みの目を向けてくる。まるで、私を見下しているように。 「……生活はどうしているの?」  さっきから黙っていた夢霧が、口を開いた。 「おばあちゃんとおじいちゃんがいますし、何とかやっていけています。」  少女は言った。  そんな少女をじっと見ていた夢霧は、少し顔を和らげて言った。 「……いいよ。その事件を聞かせて」  急に態度が変わった夢霧に、思わず少女は顔を歪ませた。 「同情からですか?」  少女から出た小さな言葉に、夢霧は、 「私の自己満足のため」  と笑った。  その言葉を聞いて少女は首をかしげたが、男はすべてが分かっているらしくハァーっとおおげさにため息をついた。 「さ、はやくおいで」  夢霧はそんな二人に声をかけて、軽い足取りで元来た道を進んでいった。
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