闇へいざなうもの(一の3)

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恭平は薫の案内で、すべての児童が姿を消した場所に到着した。車を降りると薫が先頭に立ち、その後ろに恭平と秀一がついていく。 その場所は山に続く道で、時間のせいもあるが人通りもなく、また鬱蒼と生える木々のせいで不気味な雰囲気も立ち込めている。 「これは、随分とやばそうな所だ……」 「ああ、確かにこれは何か出てもおかしくないな……」 秀一と恭平が呟く。ふと秀一が近くに立っていた石碑を見た。そこには【夜道怪の出没地】と書かれている。 「夜道怪?何だそりゃ?」 秀一が疑問を口に出すと廉が手帳を取り出し、 「あ、さっき言い忘れたんですがこの辺にはある妖怪の伝承があるそうです。夜になるとこの場所に白装束に白足袋、草履に笠を被った妖怪、夜道怪が現れるそうで、子どもは遭うとさらわれてしまうそうです」 「随分物騒だな……、でもその妖怪が原因にしても、何で前までは子供を帰していたんだろうな?」 秀一が聞くと、薫も難しい表情をして、 「それは分からなかったわ。まずさらわれたって人も何も言ってくれなかったし……。何か理由があるのかもね」 すると恭平が前方の、山に続く道を見つめた。それに気づいた秀一が、 「柴田さん?どうしました?」 「……何か来る。2人とも銃を構えろ」 彼の雰囲気に秀一と薫は危険を察知し、銃を構える。恭平も銃を構えた。 すると道の先からザッ、ザッと何かが近づいてくる音が聞こえてきた。秀一は息を飲む。薫も険しい顔つきになる。 すると闇の中から何かが現れた。白装束に白足袋、草履に笠を被ったその姿は薫が言っていた夜道怪の姿と同じだった。 「なっ!?本当に出てきたのか!」 「ということはこいつが犯人、ってことね……」 顔が見えない夜道怪がニヤリと笑う。秀一たちは銃を彼に向ける。すると恭平が、 「よし、相手はどんな能力を使うか分からん。ここは様子を見つつ……「お前が犯人か!子どもたちを返せ!」 秀一が恭平の言葉を無視して、夜道怪に突っ込んだ。 「な!?秀一よせ!」「秀一!」 恭平と薫の制止を聞かず、彼は夜道怪に拳を叩き込もう、とした。 「まずは一撃……ってあれ?何だ?」 秀一が足元を見ると大きな影が出来ており彼はその上で浮いていた。夜道怪はきちんと足をつけている。 「何だこれ……ってうわぁ!?」 そんな声を発すると、秀一は闇の中に吸い込まれていった。
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