闇へいざなうもの(一の3)

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秀一の姿が消えると、その影は夜道怪へと集まり、白装束の中に収まった。 「ちっ!あの馬鹿!薫、発砲を許可する!」 「えっ?あ、はい!」 恭平からの発砲許可が降りると、薫は夜道怪に狙いを定めた。銃の弾は対妖怪用の銃弾、効果のほどは分からないが本来通常兵器が通用しない妖怪相手には抜群、のはずだ。 「当たるか分からないけど……、撃ちます!」 薫が銃を撃つ。放たれた銃弾はまっすぐに夜道怪へと向かっていく。が、当たる直前にそれは夜道怪の前で消えてしまった。 「え!?どういうこと?確かに当たったはず……」 「やつの能力か!くそっ!」 今度は恭平が間髪入れずに銃を2回撃つ。しかし2つの弾丸はやはり、夜道怪の目の前で消えてしまう。 「またか!これ以上弾を消費するわけにはいかん……」 そう言うと恭平は身を屈め、相手の出方を見た。また頭の中では相手の能力について分析した。 (秀一を飲み込んだ影、あれがやつの能力だな。恐らくあれで児童をさらっていたのか。銃弾が消えたのも、……いや、あれは影でどこかへ飛ばしたのか。しかしその影はいったいどこに繋がっている?) すると恭平は1つの事に気づく。夜道怪が何もしてこないのだ。ただそこに立ち尽くしている。すると薫が、 「あの、えっと……、子どもたちをさらったんですよね?その、返してもらえないでしょうか?」 夜道怪に尋ねた。すると彼は細々とした声で、 「彼ら、俺見て、逃げた……。前、遊んで、くれた……。だから、遊んでくれるまで、帰さない……。」 「そうだったの……。でもあなたが返してくれなきゃ、子どもたちも遊んでくれないんじゃないの?」 すると夜道怪は首を横に振ると、 「俺と、じゃない……。俺の、弟たち、とだ……。」 「弟たち……、まさかそれが影の中にいるのか!」 恭平は声をあげた。薫がどういうことですか?と言ってこちらを見た。恭平は続けた。 「あの影の中に夜道怪の弟たちとやらがいて、彼は弟たちの遊び相手の子どもたちをさらっていたんだ。だから昔はきちんと遊んでくれた子どもたちを返した、だが今は遊んでくれないから影の中に閉じ込めているんだ」 「そんな!外からは無理なんですか?」 恐らくな、と恭平は言うと呟くように言った。 「秀一……、子どもたちを連れて脱出してくれよ……」
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