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「うー……、昨日はひどい目にあったわ……」
廉は疲れた表情を浮かべながら雑事堂へ向かっていた。
昨日彼女は北林の特別特訓を受けた、はずだった。何故曖昧なのかというと記憶がないからだ。廉はどうやら終わった後、家に帰ってすぐに爆睡してしまったのだ。
「今日は免除してもらったからいいけど……、ほんと何したか覚えてないのよね」
そう呟きながら彼女は雑事堂の扉を開ける。すると中から賑やかな声が聞こえてくる。
「……ずいぶん楽しそうね、何かあったのかしら?」
廉が入り口の階段を上がるとそこで渉と蒼也が談笑していた。しかもそこには和泉の姿もある。
「あ……、ああ!な、何であんたがここにいるのよ!?」
「ん?あら、あなたは昨日いらっしゃらなかった、廉?でしたか」
和泉が扇子で口元を隠しながら言ったが、目は廉をあざけるような、そんなものだった。
「な!?……ちょっとあんたたち、何でここを教えたのよ!」
すると渉と蒼也は口々に、
「いや、実は和泉って意外に男気あるな~って気づいてな。そこまで性格悪くもなかったし」
「ああ。それに退魔士で実力もあるし、昨日依頼をこなしてきたからな」
「ぐっ、そ、そうなの……。でも圭は認めてないでしょ?」
すると2階から大量の本を抱えた圭と結斗が降りてきた。するとすかさず和泉が駆け寄り、
「大丈夫ですか圭?手伝いますわ」
「ああ、すまないな。これとこれを頼む」
そう言うと上の2冊を和泉に手渡す。その様子を唖然として見ていた廉だったが、
「信じられない……、何で圭も仲良くなってるのよ!?」
「いや、昨日助けてもらったし。それに悪い奴じゃないと分かったからな。多少人を見下す所があるがな、渉とか」
「失礼ですわね。目上の人は敬いますわよ。あと渉は見下すのではなくバカにしてますわ」
「おい!やっぱりバカにしてんじゃねえか!」
「バカには変わりませんからね」
ぐぬぬ、と声をあげる渉を尻目に圭たちは本を机に置いた。すると結斗が、
「ま、これで退魔士が増えて俺の仕事も減るからありがたいかな。それに和泉ちゃん、働き者だし」
「いやいや、そんなことは……」
和泉が照れる。すると沈黙していた廉が体を震わせると、叫んだ。
「……そんなの、私は認めないわよぉー!」
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